- GR DIGITAL IV ファーストインプレッション -
2011-09-16
こんにちは、ワッキーです。
4代目のGR DIGITALが発表になりました。
実は、IVを手にするまで少し不安がありました。
というのもIIIの完成度がすごく高かったからです。これ以上どこに手を入れるんだろう、入れられるんだろう、そんな風に思ってました。
でも、IVを実際に手に取って使い込んでいくうち、IIIまでの良いポイントをしっかりとおさえながら、"シャッターチャンスに強い"スナップシューターとしての実力が上がっていること、さらにはあれこれと試行錯誤しながら撮影することが楽しくなるような、カメラの表現力もぐんと上がっていることに気づきました。
インターバル合成(約47分間) SS:8 F:2.8 ISO:400 WB:マニュアル
この記事では機能紹介に加え、実際に使用してみての感触をお伝えしたいと思います。
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<外観の変更点>
まずは外観から見ていきたいと思います。
GR DIGITAL IIIと比較してみました。
#比較画像では常に左側がIV、右側がIIIになるように配置して撮影しています。
正面から。
外寸はIIIと変わりません。
一番大きな外観の変更はレンズ左上のパッシブAFセンサーの復活搭載です。パッシブAF自体はCX5から搭載されていますが、GR DIGITALでは今回から搭載になりました。同じくパッシブAFを搭載していた初代のルックスにかなり近い印象ですね。
パッシブAFならではの機能もありますが、これについてはまた後ほど。
また、IVからCCDシフト方式の手ぶれ補正が搭載されました。
レンズ鏡胴の刻印に手ぶれ補正を意味する"VC"の文字を確認することができます。
以前から社内の新製品モニターやGRブロガーの間でも手ぶれ補正機能の要望はあったのですが、
まさかボディサイズを変えずに搭載することができるとは思いもせず、初めてIVの仕様を聞いたとき驚きました。
かなり苦労して手ぶれ補正機構を入れ込んだと聞いています。中を見比べてみたいですね。
次に斜め上から。
グリップの形状にも改良が入っています。
斜め上からの画像を見ていただきたいのですが、グリップのつけ根あたり、パッシブAFセンサーの少し左側をよく観察すると、グリップラバーと筺体の接続部分が滑らかな曲線になっていることがわかると思います。
グリップした指が鏡銅に当たりづらいような工夫がされているんですね。
また、ホットシューの軍艦部からの凸量がIIIと比べて0.3mm低くなっています。わずかな差ではありますが、手に取ると受ける印象が違いますね。
続いて背面です。
十字キーの部材が変わっていることがぱっと見て気がつくポイントでしょうか。
もうひとつ、IVでは親指が当たる位置のグリップラバーの面積が広くなっています。
親指は撮影時にカメラをホールドする際の裏側の支点になります。私の場合、親指は再生ボタンに被るかどうかという位置においてグリップするので、その位置にラバーがあることでぐっと安定性が上がっているのを感じました。
実は、このグリップラバーの改良は十字キーの部材変更によって実現できているんですね。
よく見ていただけるとわかるのですが、フラッシュやマクロなどのアイコンを、キーの中に印字できるような部材に変更することで生まれたスペース分だけラバーの面積を広くすることができています。
IVで採用された新しい十字キーは、実際に使ってみるとIIIから違和感なく直ぐに慣れることができました。でもIIIの十字キーの操作感に不満が無かった私は、なぜわざわざ変更したのか最初はわかりませんでした。
これは非常に細かい改良なのですが、従来機のコンセプトやフィーリングを極力変えないでさらにより良いものを作るという、GR DIGITALというカメラシリーズに対する一貫した考え方がよく現れている改良だなあと思うとともに、作り手の変わらない姿勢に感心したポイントでした。
そうそう、写真ではわかりませんが背面液晶も新しく約123万ドットで明るいシーンでの視認性に優れた高輝度なタイプに変更になっています。
最後はまた、少し細かいところ。
これまでの写真では分かりづらい細かな変更ですが、IVでは全体的に面の角を少し取ったような処理が施されています。
カメラを構えたときに指(私の場合、薬指です)にあたる箇所の角が取れているのでよりストレスなくグリップできるんですね。
また、この処理のおかげでカメラ全体が少し優しい印象になっています。
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続いては機能面。
大きくスナップカメラとしての速写性や操作性、カスタマイズ性に関する機能アップと、新たな撮影モードの追加などの表現力アップに分けて紹介しますね。
<スナップカメラとしての機能アップ>
パッシブAFとコントラストAFのハイブリッドAF
先ほど外観の説明でも少しふれましたが、IVからパッシブAFのセンサーが復活しています。
GR DIGITAL IVではパッシブ方式とコントラスト方式の2つのAF方式を採用しています。
パッシブAFの場合、レンズを動かすことなく被写体までの距離を常に測り続けることができるという特長があります。このパッシブAFで得た距離情報と、コントラストAFを組み合わせることで高速で正確なピント合わせを実現しています。
Pモード SS:1/160 F:3.2 ISO:80 WB:AUTO -0.3EV
画像設定:白黒(コントラスト:6/シャープネス:4) 中央重点測光
IIIで搭載されたフルプレススナップ機能にもパッシブAFが効いてきます。まずフルプレススナップ機能について紹介すると、これはシャッターを一気押しすると予め設定しておいた距離にピントを合わせて撮影することができる速写機能ですね。
このフルプレススナップ機能のフォーカス距離に、パッシブ方式で測った情報を設定することができるようになりました。つまり、一気押しでもAFを効かせて撮影することができるんですね。
撮りたい瞬間を逃さず撮影したい、というときに心強い機能です。
この機能を有効にするには、スナップ時フォーカス距離の設定を新たに追加された「AUTO」に設定します。
Fnボタンペア設定:カスタマイズ性、機能へのアクセシビリティの向上
IIIではFn1、Fn2ボタンによく利用する機能を割り当てて使うことができますが、IVはもう一歩進化して、Fn1とFn2の割り当ての組合せを4つまで登録して、組合せごと切り替えて使うことができるようになっています。
私の場合、フォーカスロックの目的でFn1には常にAF/MFを設定したいので、Fn2の設定を切り替えるように設定しています。
さらにこのFnペアの切り替えにはショートカット操作が用意されています。Menuに潜ることなく、撮影可能な状態で十字キーの上を押しながら前ダイヤルを回すことで簡単に切り替えることが出来ます。
また、おなじみのマイセッティング機能もGXR MOUNT A12から実装されたSDカードへの設定書き出し、読み込みが搭載されたほか、カメラ内への登録可能件数も6件から12件へと増えました。
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<カメラの表現力アップ>
IVから新たな画像設定が追加されたり、街の景色と星の光跡を一緒に撮影できたりと、IVから表現の幅もぐっと広がっています。
一部シーンモードの画像設定への変更と新画像設定の追加
これまでシーンモードにあったモード(ハイコントラスト白黒、クロスプロセス)が画像設定に移動になり、全ての露出制御モードで画像設定画面から選択できるようになりました。
少し地味な変更のように見えますが、効果的な改良に感じました。
IIIまでこれらのモードは軍艦部のダイヤルを回さないと選択できないシーンモードにあり、撮影までにかかる手番が多かったため利用頻度はあまり高くありませんでした。
これが画像設定に入ったことで、たとえばFnボタンに機能を割り当てたり、上の図のようにADJボタン押下から選択できたりと、機能へのアクセスがぐっと楽になっています。
また、シーンモードから移動した画像設定とは別に、ブリーチバイパス、ポジフィルム調という2つのモードが新たに追加になりました。
ブリーチバイパスはフィルム現像課程におけるいわゆる銀残しと呼ばれる、黒が締まり、少し彩度が落ちたような仕上がりを得ることができます。色調をノーマル、寒色、暖色から選べます。
[ブリーチバイパスの設定画面]
私は寒色の設定がお気に入り。ハイキーな画とよく合います。
Pモード SS:1/250 F:3.2 ISO:AUTO(80) WB:AUTO 0.0EV
画像設定:ブリーチバイパス:寒色 中央重点測光
Pモード SS:1/125 F:2.5 ISO:AUTO(160) WB:AUTO +1.3EV
画像設定:ブリーチバイパス:寒色 中央重点測光
続いてポジフィルム調です。
[ポジフィルム調の設定画面]
中間の調子がコントラストが高めになり、色味もスタンダードなどと比べると異なります。緑を撮ると違いがよく出ますね。彩度、コントラスト、シャープネスを変更できるので、少しこってりした仕上りにしたり、逆にあっさり、といったことができます。
ポジフィルムにお気に入りの銘柄がある方は、これらのパラメータでフィルムシュミレートをして、設定をカードに書き出して共有、なんてことができると楽しそうですね。
Pモード SS:1/160 F:3.2 ISO:AUTO(80) WB:AUTO 0.0EV
画像設定:ポジフィルム調(周辺減光:弱/彩度:3) 中央重点測光 マクロモード
Pモード SS:1/160 F:3.2 ISO:AUTO(80) WB:AUTO 0.0EV
画像設定:ポジフィルム調(周辺減光:弱/彩度:3) 中央重点測光
Pモード SS:1/30 F:1.9 ISO:AUTO(114) WB:AUTO 0.0EV
画像設定:ポジフィルム調(周辺減光:弱/彩度:4/シャープネス:4) 中央重点測光
そうそう、ハイコントラスト白黒は調整できるパラメータが増えていますよ。
新たにシャープネスと周辺減光が調整できるようになっています。
[ハイコントラスト白黒設定画面]
Pモード SS:1/220 F:2.5 ISO:AUTO(80) WB:AUTO 0.0EV
画像設定:ハイコントラスト白黒(コントラスト:-2/シャープネス:3)
オートブラケット機能の強化
ブラケット機能も強化されています。
新たに画像設定ブラケット、DRブラケット、コントラストブラケットの3つのブラケット機能が追加になりました。
DRブラケットは先ほど説明した新機能のダイナミックレンジ補正機能の強さを3段階に変えて撮影できます。
この中で画像設定ブラケットを少し詳しく紹介しますね。
画像設定ブラケットは適用したい画像設定を3つまで設定して1ショットで同時に撮影できる機能です。
私の場合、画像設定ブラケットを設定してマイセッティングモードの2と3に記憶し、すぐにブラケット撮影ができるようにしています。
設定画面に1枚目はありませんが、1枚目にはそのときに設定している画像設定が適用されます。
それでは撮影してみます。
以下3枚の共通設定
Pモード SS:1/400 F:4.5 ISO:AUTO(80) WB:AUTO 0.0EV 中央重点測光
1枚目「設定1(彩度:4/コントラスト:4)」
2枚目「ポジフィルム調(周辺減光:弱/彩度:4/シャープネス:4)」
3枚目「白黒(コントラスト:6/シャープネス:4)」
地面と空との割合、電車と鉄塔の位置、気に入っている写真です。
3つを見比べるとどれも良いのですが、画像設定によって受ける印象がかなり変わってきます。撮影した後で、やっぱり***で撮れば良かった~というようなことがオートブラケット機能を使うことで減らせます。
表現力アップというくくりで紹介していますが、シャッターチャンスに強い、スナップカメラ向きの機能とも言えそうです。
そう、リコーカメラではおなじみの水準器機能も進化して、IVからはあおり方向も検知できるようになりました。
こんな風に、コンパクトに表示されます。
※水平方向は合っているが、あおり方向はレンズがやや下に向いている状態です。
あおり方向が必要ない方は従来どおり水平方向のみの表示にすることもできます。
インターバル合成機能
新しい機能の中でも私が特に面白いと思った機能がこれ。
ブログ冒頭の写真はこの機能を使って撮影しています(残念ながら私が撮影した写真ではないのですが...)。
星の撮影というと、長時間露光でずーっとシャッターを開けたまま、というイメージがあったのですが、この機能は少し違うんです。
一定間隔で撮影した画像を1枚1枚合成していきます。
これだけだとインターバル撮影と多重露光を組み合わせただけのようなのですが、この機能は画像合成の方法が特殊で、合成前と比べて明るくなったところは明るく、明るさが変わらないところはそのまま、こんなふうに合成していきます。
これは比較明という合成方法で、都内のような明るい空でも星の光跡が残せるのが特長です。天体写真ではメジャーな方法なんだそうですよ。
この合成をカメラ内だけでやってしまう、そんな機能です。撮影間隔を変えたり、インターバル撮影中に合成の途中経過を確認したりといったこともできますよ。
もう一枚、これも私の写真ではありませんが、すばらしい写真ですのでご紹介します。
インターバル合成(約3時間50分間) SS:8 F:2.8 ISO:100 WB:マニュアル
上の写真はバッテリーをフルに使って、なんと3時間50分間分(!!)の画像を合成したものなんだそうです。
撮影結果は天候に大きく左右されます。何時間も雲が無いことは稀で、実際に撮影してみるとなかなか上の写真のようには撮れませんが、何十分と待って光跡が写っているのを確認したときはとても感動しました。
これからの時期、関東では晴天率が高く空気が澄んでくるのでさらにチャレンジしてみたいですね。
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最後に作例をいくつかご紹介します。
Pモード SS:1/400 F:4.0 ISO:AUTO(80) WB:AUTO 0.0EV
画像設定:スタンダード 中央重点測光 マクロモード
IVになっても1cmマクロ機能は健在で、このCCDサイズでも被写体に近づくとかなりボケてくれます。雨上がり、最近は殆ど見ることのないカタツムリがいました(虫嫌いの人ごめんなさい)。
マクロ領域のAF速度も早くなっています。
Pモード SS:1/100 F:2.5 ISO:AUTO(80) WB:AUTO -1.0EV
画像設定:ハイコントラスト白黒(コントラスト:-2/シャープネス:3) 中央重点測光
展示されていたSLの重厚でメタリックな動力部分を撮影。ポジフィルム調、ハイコントラスト白黒、白黒の画像設定ブラケットで撮影して、一番質感が良かったハイコントラスト白黒の1枚を選びました。
多重露光(3枚) Pモード SS:1/100 F:2.5 ISO:AUTO(80) WB:AUTO 0.0EV
画像設定:スタンダード 中央重点測光
新機能の多重露光機能をつかって手持ちで3枚を合成してみました。稲が風になびく様子が不思議な表情で合成されました。
工夫することで色々なイメージをつくることができそうですね。
Pモード SS:1/25 F:1.9 ISO:AUTO(800) WB:AUTO -1.0EV
画像設定:ビビッド 中央重点測光
かなり薄暗い日没前の時間帯、空の色を出すため画像設定ビビッドで撮影。ISO感度はISO-AUTO HI設定の上限設定値 800まで上がっていますがノイズが少なく破綻の無い画が得られました。
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いかがでしたでしょうか。
GR DIGITAL IVは感動する場面に出会ったときのためにポケットに鞄に忍ばせておきたい、そんな信頼できるカメラだと感じました。
ご紹介したい機能や改良点はまだまだあるのですが、ちょっと長くなってしまいましたので他のライターにお願いしてこのあたりでしめたいと思います。
製品紹介ページにも詳細な機能紹介がありますので参考にしてみてくださいね。
RING CUBEでの先行展示もあると聞いていますので、ぜひ手にとって感触を確かめていただきたいです。
発売は10月中旬の予定です。
発売日やイベントの詳細が決まりましたらニュースリリースおよびGRブログでも情報発信していきますね。
それでは良い週末を!