GXR情報

特別寄稿:旅のサブカメラにも最高の画質を GR LENS A12 28mm F2.5 (第1回)

2011-06-18
こんにちは。ふーです。

昨年の5月から6月にかけて、「A12 50mmを持って撮影に出かけよう」(全3回)という記事を社内モニターのTRKさんに書いてもらいました。その後発売されたGR LENS A12 28mmについて、改めて熱く語ってくれましたのでご紹介します。今回は前後編の2回構成です。ではどうぞ!

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太平洋に浮かぶ南の島に、虹が映えます。

GXR GR LENS A12 28mm F2.5
ISO200, F5, 1/200 sec., -0.3EV
RES05682.JPG

はじめに

お久しぶりです、TRKです。2010年6月に、A12 50mm F2.5 GRユニットを紹介して以来になります。

GXRシリーズの当初3本のラインアップは、レンズを交換するとイメージセンサーのサイズまで一緒に変わるというユニークな存在で、ハイエンドコンパクトカメラがAPS-Cのミラーレス一眼のようなカメラや高倍率コンパクトのようなカメラにトランスフォームするのが楽しいシステムでした。(トラックバックの中には、レンズのサイズを一定にするためセンサーサイズの方を変えている、という鋭い分析もありましたね。)

そこへ新しく登場したA12 28mm F2.5 GRユニットは、僕のお気に入りのA12 50mmと同等のAPS-Cサイズのセンサーを採用しています。ここに来て、GXRシリーズをレンズ交換式一眼カメラのように使うことも可能になり、面白い展開になって来ました。

この新しいユニットを使って感じた魅力ですが、まずアスペクト比3:2で28mm画角が得られる点が銀塩世代の僕には嬉しいです。そして、一般的なパンケーキレンズ並に薄い光学系を、このクラスとしては大型なセンサーと組み合わせた上で、中心から周辺までシャープな写りを実現できたことが最大のポイントです。その秘密は本文を読んでいただくとして、懸念だったAFも従来よりずっと速くなっています。(ファームウェア V1.29でA12 50mmのAFも速くなりました!)

今回は太平洋上の南の島で旅のスナップ写真を実写して来ましたので、その結果を交えながら、「前編」「後編」の2回に渡ってこのA12 28mmユニットの実力と、少しばかりの新情報を紹介したいと思います。


画質
今日の「前編」では、主に日中自然光におけるA12 28mmの画質について見て行きます。合わせて、薄型レンズでありながら中心から周辺まで画質を上げることができた理由も調べてきましたので、後ほど紹介しますね。

1. 周辺までシャープに写るGRレンズ
最初は、レンズの実力を見ていただく上で中心画質と周辺画質を比べてみましょう。広角レンズといえば絞って使うケースが多いと思いますが、ここでは絞りを少し開け気味に撮っています。なお、比較のため画質は全てJPEG FINE、画像設定はスタンダードにしています。

#496 ISO400, F3.5, 1/1150
RES05496.JPG

このレンズとしては約1段絞っていますが、多くのズームレンズでは開放絞りに相当します。被写界深度内の範囲となる画面のおよそ上半分の椰子の葉を見ると、どこを取ってもシャープに描写しているのがわかると思います。

Top
R0013496.top.jpg

Center
R0013496.center.jpg

#378 ISO200, F4.5, 1/1740
RES05378.JPG

F4.5まで絞っていますが、ここでも中央の葉と左端の葉の描写に差がないことがわかります。

R0013378.leftcorner.jpg

R0013378.uppercenter.jpg

#345 ISO200, F3.2, 1/1520
RES05345.JPG

旅の基地に選んだ、自炊できる部屋からの眺望です。人工物で恐縮ですが、F3.2でも右上隅や右端の描写は崩れません。

右上隅
R0013345.toprightcorner.jpg

中央
R0013345.center.jpg

真中から右の周辺
R0013345.rightflank.jpg

2. 質感描写
画 質を語る上で鮮鋭度は重要な指標ですが、シャープネスを高めただけではギスギスした絵になることもあるため、懐の深さを感じさせる質感描写が同じくらい大 事になります。この点、A12 28mmは、このクラスとして大き目なAPS-Cサイズのセンサーを採用しているだけあって、レンズの光学性能を存分に生かせるトーンの豊かさを合わせ 持っています。

#443 ISO400, F2.5, 1/570 sec.
RES05443.JPG

手を差し出すと、舐めはじめたと思ったらそのまま指を食べられそうになりました。愉快なヤギです。さて、この画像を等倍で切り出してみると、犬やネコよりちょっと硬い毛並みがわかるだけでなく、暗い色の部分のトーンの描写にセンサーサイズから来る余裕を感じます。

R0013443.strands.jpg

#384 ISO200, F2.5, 1/540 sec.
RES05384.JPG

立体物ではシャープネスと同じか、それ以上に質感やトーンが重要です。
R0013384texture.jpg

#481 ISO200, F2.5, sec.
RES05481.JPG

植物のグリーンとイエローのペイント。素材感の違いがはっきりわかります。
R0013481.steel.jpg R0013481.leaves.jpg

#540 ISO200, F5, 1/2500 sec.
RES05540.JPG

雨に濡れた路面のしっとりとした質感と、空と海のトーン、シャープに解像した監視台の共存です。
R0013540.wetsurface.jpg R0013540.baywatch.jpg


3. 逆光耐性
A12 28mmでは、直接レンズに逆光が入射するような場面でもシャープな像を得られます。

#429 iSO400, F13, 1/1300 sec.
RES07429.JPG

波と波が画面中ほどでクロスしたところです。沈む夕陽が直射しています。
#499 ISO200, F3.5, 1/410
RES05499.JPG

孤独なサーファーの後ろで、太陽が雲の陰から現れようとしています。このときの波の音が、今でも聞こえるようです。
#819 ISO200, F8, 1/800 sec. -0.3EV
RES05819.JPG

A12 50mmの比較画像。ここはもう少し穏やかなビーチです。
#711 IS200, F5.6, 1/500 sec. -0.3EV
RES05711.JPG

但し画角外に強い光があると、フレアが発生することがあります。様々な条件が重なるため一概に言えませんが、レンズコーティングでは防げない斜めからの光線が原因です。多くの場合、いわゆるハレ切りやフードを常用することで防ぐことができます。別売なのが惜しいですが、オプションの角型フードは実用性もデザイン上のマッチングも良好だと思います。

*内蔵フラッシュはフードにケラれてしまうので注意して下さい。

4. 近接撮影とボケ
このレンズ、リコーの十八番とも言えるマクロ機能がないため、お世辞にもクローズアップが得意とは言えません。それでも、一般的な単焦点の交換レンズより寄って撮ることができますし、近接時の背景ボケは素直で良い感じです。最短撮影距離がレンズ光学系の薄さとのトレードオフだとすれば、個人的には許容範囲です。なお、回避手段としてクローズアップレンズを選ぶ場合は、40.5mm径となります。

#428 ISO400, F4.0, 1/1620 sec.
RES05428.JPG

焦点面
R0013428.crop.jpg

背景ボケ
R0013428.bokeh.jpg

すぐ手の届く距離まで寄って撮っています。ガラス越しなんですね。
#461 ISO400, F3.5, 1/133 sec.
RES05461.JPG

焦点面
R0013461.focus.jpg

背景ボケ
R0013461.bokeh.jpg

#389 ISO200, F2.5, 1/233 sec.
RES05389.JPG

焦点面
R0013389.focus.jpg

背景ボケ
R0013389.bokeh.jpg

#475 ISO400, F3.5, 1/176 sec.
RES05475.JPG

R0013475.bokeh.jpg

R0013475.focus.jpg

5. 点光源ボケ
このレンズは円形絞りを採用しているので、少し絞っても点光源ボケがギザギザになりません。開放時のボケ型も、周辺部を除いて綺麗な丸みを持っています。(隅部のボケといえば、A12 50mmという上には上の存在がありますからね。)

#399 ISO200, F2.5, 1/111 sec.
RES05399.JPG

焦点面
R0013399.focus.jpg

背景ボケ
R0013399.bokeh.jpg

#422 ISO400, F4, 1/2170
RES05422.JPG

焦点面
R0013422.focus.jpg

光点ボケ
R0013422.bokeh.jpg

まとめ
今度のA12 28mmユニットは、パンケーキレンズ並に薄くした鏡胴と比較的大型なAPS-Cセンサーの組み合わせでありながら、無理なく高い画質が実現できている点を見ていただきました。

その秘密は、電源ONと同時に鏡胴を若干繰出すというのもありますが、主としてレンズとセンサーを一体化したことが良い方向に作用したことです。具体的には、光学設計がマウント規格による制約に縛られないことをはじめ、センサーの最終仕上げまでもレンズごとに最適化できることです。実は、28mmと50mmのカメラユニットは同じA12センサーでありながらも、LPFのカットオフ周波数など味付けは異なるんです。

A12 28mm F2.5
28mm.resized.3.2.jpg

A12 50mm F2.5
50mm.resized.3.2.jpg

つまり、それぞれのA12ユニットは、APS-Cセンサー採用のレンズ固定式・画質追求型カメラと見做すことができるんですね。それでいて、ミラーレス一眼のようにレンズ交換可能という拡張性を合わせ持っています。この"良いとこ取り"がGXRシリーズの持ち味です。言葉を変えると、A12 28mmの登場により、潜在的に持っていたGXRシステムのメリットが明らかになって来たとも言えるでしょう。開発表明がされている2本のAPS-Cセンサー採用カメラユニットが今年デビューすると、このメリットは更にわかりやすくなるのだろうと今から楽しみにしています。

では、次週は高感度撮影時の画質を中心に見て行きたいと思います。


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