GXR情報
特別寄稿:旅のサブカメラにも最高の画質を GR LENS A12 28mm F2.5 (第1回)
昨年の5月から6月にかけて、「A12 50mmを持って撮影に出かけよう」(全3回)という記事を社内モニターのTRKさんに書いてもらいました。その後発売されたGR LENS A12 28mmについて、改めて熱く語ってくれましたのでご紹介します。今回は前後編の2回構成です。ではどうぞ!
=======================================
太平洋に浮かぶ南の島に、虹が映えます。
GXR GR LENS A12 28mm F2.5
ISO200, F5, 1/200 sec., -0.3EV

はじめに
お久しぶりです、TRKです。2010年6月に、A12 50mm F2.5 GRユニットを紹介して以来になります。
GXRシリーズの当初3本のラインアップは、レンズを交換するとイメージセンサーのサイズまで一緒に変わるというユニークな存在で、ハイエンドコンパクトカメラがAPS-Cのミラーレス一眼のようなカメラや高倍率コンパクトのようなカメラにトランスフォームするのが楽しいシステムでした。(トラックバックの中には、レンズのサイズを一定にするためセンサーサイズの方を変えている、という鋭い分析もありましたね。)
そこへ新しく登場したA12 28mm F2.5 GRユニットは、僕のお気に入りのA12 50mmと同等のAPS-Cサイズのセンサーを採用しています。ここに来て、GXRシリーズをレンズ交換式一眼カメラのように使うことも可能になり、面白い展開になって来ました。
この新しいユニットを使って感じた魅力ですが、まずアスペクト比3:2で28mm画角が得られる点が銀塩世代の僕には嬉しいです。そして、一般的なパンケーキレンズ並に薄い光学系を、このクラスとしては大型なセンサーと組み合わせた上で、中心から周辺までシャープな写りを実現できたことが最大のポイントです。その秘密は本文を読んでいただくとして、懸念だったAFも従来よりずっと速くなっています。(ファームウェア V1.29でA12 50mmのAFも速くなりました!)
今回は太平洋上の南の島で旅のスナップ写真を実写して来ましたので、その結果を交えながら、「前編」「後編」の2回に渡ってこのA12 28mmユニットの実力と、少しばかりの新情報を紹介したいと思います。
今日の「前編」では、主に日中自然光におけるA12 28mmの画質について見て行きます。合わせて、薄型レンズでありながら中心から周辺まで画質を上げることができた理由も調べてきましたので、後ほど紹介しますね。
1. 周辺までシャープに写るGRレンズ
最初は、レンズの実力を見ていただく上で中心画質と周辺画質を比べてみましょう。広角レンズといえば絞って使うケースが多いと思いますが、ここでは絞りを少し開け気味に撮っています。なお、比較のため画質は全てJPEG FINE、画像設定はスタンダードにしています。
#496 ISO400, F3.5, 1/1150

このレンズとしては約1段絞っていますが、多くのズームレンズでは開放絞りに相当します。被写界深度内の範囲となる画面のおよそ上半分の椰子の葉を見ると、どこを取ってもシャープに描写しているのがわかると思います。
Top

#345 ISO200, F3.2, 1/1520

旅の基地に選んだ、自炊できる部屋からの眺望です。人工物で恐縮ですが、F3.2でも右上隅や右端の描写は崩れません。
右上隅

中央

真中から右の周辺

2. 質感描写
画 質を語る上で鮮鋭度は重要な指標ですが、シャープネスを高めただけではギスギスした絵になることもあるため、懐の深さを感じさせる質感描写が同じくらい大 事になります。この点、A12 28mmは、このクラスとして大き目なAPS-Cサイズのセンサーを採用しているだけあって、レンズの光学性能を存分に生かせるトーンの豊かさを合わせ 持っています。
#443 ISO400, F2.5, 1/570 sec.

手を差し出すと、舐めはじめたと思ったらそのまま指を食べられそうになりました。愉快なヤギです。さて、この画像を等倍で切り出してみると、犬やネコよりちょっと硬い毛並みがわかるだけでなく、暗い色の部分のトーンの描写にセンサーサイズから来る余裕を感じます。

#384 ISO200, F2.5, 1/540 sec.

立体物ではシャープネスと同じか、それ以上に質感やトーンが重要です。

#481 ISO200, F2.5, sec.

植物のグリーンとイエローのペイント。素材感の違いがはっきりわかります。


#540 ISO200, F5, 1/2500 sec.

雨に濡れた路面のしっとりとした質感と、空と海のトーン、シャープに解像した監視台の共存です。


3. 逆光耐性
A12 28mmでは、直接レンズに逆光が入射するような場面でもシャープな像を得られます。
#429 iSO400, F13, 1/1300 sec.

#499 ISO200, F3.5, 1/410

孤独なサーファーの後ろで、太陽が雲の陰から現れようとしています。このときの波の音が、今でも聞こえるようです。
#819 ISO200, F8, 1/800 sec. -0.3EV

A12 50mmの比較画像。ここはもう少し穏やかなビーチです。
#711 IS200, F5.6, 1/500 sec. -0.3EV

但し画角外に強い光があると、フレアが発生することがあります。様々な条件が重なるため一概に言えませんが、レンズコーティングでは防げない斜めからの光線が原因です。多くの場合、いわゆるハレ切りやフードを常用することで防ぐことができます。別売なのが惜しいですが、オプションの角型フードは実用性もデザイン上のマッチングも良好だと思います。
*内蔵フラッシュはフードにケラれてしまうので注意して下さい。
このレンズ、リコーの十八番とも言えるマクロ機能がないため、お世辞にもクローズアップが得意とは言えません。それでも、一般的な単焦点の交換レンズより寄って撮ることができますし、近接時の背景ボケは素直で良い感じです。最短撮影距離がレンズ光学系の薄さとのトレードオフだとすれば、個人的には許容範囲です。なお、回避手段としてクローズアップレンズを選ぶ場合は、40.5mm径となります。
#428 ISO400, F4.0, 1/1620 sec.

焦点面

背景ボケ

すぐ手の届く距離まで寄って撮っています。ガラス越しなんですね。
#461 ISO400, F3.5, 1/133 sec.

焦点面

背景ボケ

#389 ISO200, F2.5, 1/233 sec.

焦点面

背景ボケ

#475 ISO400, F3.5, 1/176 sec.



5. 点光源ボケ
このレンズは円形絞りを採用しているので、少し絞っても点光源ボケがギザギザになりません。開放時のボケ型も、周辺部を除いて綺麗な丸みを持っています。(隅部のボケといえば、A12 50mmという上には上の存在がありますからね。)
#399 ISO200, F2.5, 1/111 sec.

焦点面

背景ボケ

#422 ISO400, F4, 1/2170

焦点面

光点ボケ

まとめ
今度のA12 28mmユニットは、パンケーキレンズ並に薄くした鏡胴と比較的大型なAPS-Cセンサーの組み合わせでありながら、無理なく高い画質が実現できている点を見ていただきました。
その秘密は、電源ONと同時に鏡胴を若干繰出すというのもありますが、主としてレンズとセンサーを一体化したことが良い方向に作用したことです。具体的には、光学設計がマウント規格による制約に縛られないことをはじめ、センサーの最終仕上げまでもレンズごとに最適化できることです。実は、28mmと50mmのカメラユニットは同じA12センサーでありながらも、LPFのカットオフ周波数など味付けは異なるんです。
A12 28mm F2.5

A12 50mm F2.5

つまり、それぞれのA12ユニットは、APS-Cセンサー採用のレンズ固定式・画質追求型カメラと見做すことができるんですね。それでいて、ミラーレス一眼のようにレンズ交換可能という拡張性を合わせ持っています。この"良いとこ取り"がGXRシリーズの持ち味です。言葉を変えると、A12 28mmの登場により、潜在的に持っていたGXRシステムのメリットが明らかになって来たとも言えるでしょう。開発表明がされている2本のAPS-Cセンサー採用カメラユニットが今年デビューすると、このメリットは更にわかりやすくなるのだろうと今から楽しみにしています。
では、次週は高感度撮影時の画質を中心に見て行きたいと思います。





この記事へのトラックバック一覧
- 深夜のラッキー? [from 今日も明日も愛してる]
このナンバーを踏んでいることに気がつかなかった。車のライトが通り過ぎると白いナンバーが浮かび上がった。 RICOH CX5で撮影 続きを読む
TrackBack 2011/06/22
- メーター [from 必撮!勤め人]
★秋葉原、GXR+P10、PCでモノクロ化 街を漂泊すれば面白い光景と遭遇出来る予感があるので、今度の週末は撮影したいな。 と、毎週思っているのだ... 続きを読む
TrackBack 2011/06/22
- 平成の鯨海酔侯 [from おれのほそ道]
ィ吉田類です… と、今日も飲っていましたね、BS TBS 『吉田類の酒場放浪記』 日曜日はHARD OFF ECOスタジアム新潟で『吉田類さん野球場... 続きを読む
TrackBack 2011/06/21
- 世界の中心で愛を叫べ! [from 猫と6ペンス]
RICOH GR DIGITAL III (Jpeg/Lightroom3) 世界を愛で満たそうよ 続きを読む
TrackBack 2011/06/21
- ひとり紫陽花まつり [from A Small Bridge Knows the World]
今日のわたしは紫陽花ハンター(b^-゜) 街角の紫陽花 軒先の紫陽花 軒先の紫陽花 庭先の紫陽花 絵馬と紫陽... 続きを読む
TrackBack 2011/06/21
- 紫陽花(大阪弁護士会館) [from GRアート☆柿本大治司法書士・行政書士事務所【大阪 司法書士】【大阪 行政書士】都島区]
雨上がり♪ 大阪法務局北出張所に相続登記の申請に行くついでに、 大阪弁護士会館の紫陽花をカシャ☆ カメラをカバンに入れておいてよかった! ... 続きを読む
TrackBack 2011/06/21
- 収差 [from 必撮!勤め人]
★新宿、GXR+P10、リサイズのみ 夜の新宿で撮影したimageだが電灯の描写がGRD3とは違う。 高倍率ズームと単焦点レンズを比較するのは酷だ... 続きを読む
TrackBack 2011/06/21
- Happy Father's Day [from What Would Jesus Do ?]
昨日は父の日 RICOH GXR + GR LENS A12 50mm F2.5 MACRO わがやでは こんな父の日でした RICOH GXR +... 続きを読む
TrackBack 2011/06/20
- 寄れるMマウント [from gr-digital.netブログ]
コシナがMマウントのくせに最短撮影距離50cmというレンズを出すそうです。 nokton 35mm F1.2 Mマウントのくせにというのは、近距離では距... 続きを読む
TrackBack 2011/06/20
- シャッター三拍子 [from 今日も明日も愛してる]
シャッターを押す時はいつもときめく。 好きよ。 好きよ。 大好きよ。 RICOH CX5で撮影 続きを読む
TrackBack 2011/06/20
- ピロートークな温泉街 [from 猫と6ペンス]
RICOH GR DIGITAL III (Jpeg/No Retopuch) 岡山を代表する温泉のひとつ湯郷温泉。 昨日、仕事の合間にち... 続きを読む
TrackBack 2011/06/20
- やさしい知らんぷりの街 [from 今日も明日も愛してる]
街も人も好きだ。 RICOH CX5で撮影 続きを読む
TrackBack 2011/06/20
- B&W P5用ケーブル [from 必撮!勤め人]
★GXR+P10、マクロモード、内蔵ストロボ発光、PCでモノクロ化 ヨドバシ@アキバで発注したB&W P5用高品質ケーブルが届いて2週間経過。 ... 続きを読む
TrackBack 2011/06/20
- 飛行機 [from 今日も明日も愛してる]
自分が今空にいるなんて、地上にいる時には考えもしなかった。空はいつも見上げるだけだと思っていたから。 RICOH CX5で撮影 続きを読む
TrackBack 2011/06/19
- ももたまなの空 [from 今日も明日も愛してる]
命を守る沖縄の木はきっと空を覆うくらい繁っていることだろう。 2011年4月 RICOH CX5で撮影 〔関連記事〕 「ももたまな... 続きを読む
TrackBack 2011/06/19
- Yesterday Was Beautiful 3 [from Brown's BLOG...ぶぅろぐ2]
【RICOH GRD2】 地震直後のシンデレラ城。急に雲が空を覆い、鳥が乱舞し、 続きを読む
TrackBack 2011/06/19
- 相性ピッタリ! [from 青空Cafe☆【司法書士 大阪】【行政書士 大阪】大阪市都島区]
バラと相性ピッタリのクレマチス。 バラがいっぱい咲いている中で存在感を示していま 続きを読む
TrackBack 2011/06/19
- 2400-110607 iPadのいいところ [from shiology]
GXR 28mmユニット 1限:民法1 ・債務はなぜ発生するか 6限:リーガルリサーチ(ロースクール) ・要物性の根源 GXR 28mmユニット 会議でノ... 続きを読む
TrackBack 2011/06/19
- 2399-110606 iPhone/iPadから「へその緒」がはずれた!! [from shiology]
GXR 28mmユニット アップルから「iOS 5」、「OS X Lion」、そして「iCloud」が発表されました。 「iOS 5」→http://ww... 続きを読む
TrackBack 2011/06/19
- アキバでsnap [from 必撮!勤め人]
★秋葉原、GXR+P10、PCでモノクロ化&周辺をトリミング この貌で「がんばろう!」と言われても、な(汗) GRD系を長く使っていると広角レ... 続きを読む
TrackBack 2011/06/19
- 梅雨を堪能 [from What Would Jesus Do ?]
これぞというぐらい 梅雨らしい雨の午後 RICOH GR DIGITAL 3 いつもの公園も人がおらず かわりに、あじさいが元気 RICOH GR ... 続きを読む
TrackBack 2011/06/18
- スバラシイ スナックシャープ [from 昭和探訪]
RICOH GXR + S10 場所的には高島に位置すると思うのですが、こんな物件を発見。スナックシャープ。字体がシャープです。... 続きを読む
TrackBack 2011/06/18
- RICOH GXR 28mmと50mmではLPFのカットオフ周波数など味付けは異なる (GR BLOG) [from YOUのデジタルマニアックス dmaniax.com]
もうすぐ、ソニー、パナソニック、オリンパス、ペンタックス、そしてニコン??の新ミラーレスカメラが登場しますが、リコーのレンズユニット交換式カメラGXRはの... 続きを読む
TrackBack 2011/06/18