GRist
GRist 清水哲朗さん
こんにちは、みにゅう です。
今回の GRist は、Photo Style フォトグラファーズギャラリーに GR DIGITAL II で撮影した「風」を公開している写真家の清水哲朗さんです。
モンゴルを継続的に取材し、圧倒的な大自然の景色や動物、人物の写真を撮影されている清水さんに、撮影のエピソードなどをうかがいました。
■ユキヒョウに導かれてモンゴルへ
みにゅう(以降 み):最初に、モンゴルで撮影するようになったきっかけについて教えてください。
清水(以降 清):日本の動物園で「ユキヒョウ」を見て一目惚れしちゃったんですよ。動物園でよく撮影して、いつか野生のユキヒョウを撮影したいと思っていて。
そしたら、たまたま師匠(竹内敏信氏)がモンゴルで写真展を開く機会があって、同行してそこで聞いてみると、向こうにはユキヒョウが「うじゃうじゃいるよ」という話だったんです。それなら行ってみなきゃと。
独立してから行ってみると、実際はそんなにいるわけはないんですけど(笑)。世界的に貴重な動物なので。
そうしたら、モンゴルにはそれ以外にももっと魅力的なことがいっぱいあって、どんどん引き込まれていっちゃったんですね。大自然の半端じゃないスケールの大きさとか。人の文化も面白いし。何度も撮影に行ってるんですが、一度も飽きたことが無いんですよ。
車を借りて、野宿を繰り返し移動して行くというスタイルも僕にあっているみたいです。
清:行く度に撮影テーマを決めますが、合間には他のものもいろいろ撮っています。何もかも魅力があるので、撮ってるうちに新しいテーマが見つかって。じゃあ次はこれを撮りに来よう、とつながるんです。
テーマを決めて狙っても「空振り」なこともあります。でもそれも気持ちいい。無いものは無いし、待っても来ないものは来ない。そういうもの。それを受け入れて、楽しんでいます。
5月には「ゴビヒグマ」を撮影しに行ってきましたが、次は8月に「氷河」を撮りに行こうと考えています。年に3~4回は行きますね。その度に3000~4000kmを移動します。
やりたいこと撮りたいものがいっぱいで、エンドレスです。
■装備は割り切る
み:どういった装備で撮影に臨んでいるのですか?
清:装備はそれなりにしっかりしますが、最低限のものしか用意していません。テントと寝袋と食料と水があればいい。キャンプが目的ではないので。現地にも人はいるので、それに合わせればいいと思ってます。
み:撮影機材は増えて来ていますか?
清:そうですね。デジタルカメラの他に、ストレージや、GPS なども持って行きます。
電源を必要とする機材が増えて来て、電源の確保が大変ですね。バッテリーをいっぱい持って行かなきゃなんない。
なるべくカメラを数多く持って行きたい、でも機材を軽くしたいというのがあって、そこで GR DIGITAL II が登場する訳ですよ。
山に登ることもあるので、カメラを数多くと欲張ると、途中で体が動かなくなっちゃう。何かを犠牲にしないといけないんです。
動物撮影がメインだと一眼レフに望遠レンズを装着して撮影しつつ、身の回りの植物などは広角の GR DIGITAL II で、というやり方ができる。
一眼レフ用の広角ズームレンズを持って行くのと比べると、GR DIGITAL II は2台でも軽いし、コンバージョンレンズを入れても苦にならない。そこが最大のメリットです。
バッテリーもすごく良く持つのが嬉しいですね。
モンゴルで自分の無力さを自覚して打ちのめされる経験があったおかげで、機材について割り切れるようになりました。
昔はあれもこれも持って行きたかった。この被写体にはこのカメラにこのレンズの組み合わせで、とかいろいろ考えていたけど、結果として撮影できなければ何の意味も無いし。動けなくなったら終わりだし。
そんな訳で機材を割り切って、このリュック1個で、と決めるとすごく楽ですね。
■脱線することを楽しむ
み:気候的に厳しいところで撮影に苦労されるのでは?
清:1日に季節が3つあると言われるほどの寒暖差があります。
5月に撮影に行った際、昼は気温が30度まで上がって暑かったのに、次の朝5時に起きたら雪が積もっていた、なんてことがありました。雪かぁー、みたいな(笑)。まさかの展開です。
でも、それに文句言ってもしょうがない。お天道様がやったことだから。そこを受け入れてどうするかってのが大切なこと。
モンゴルは予定外の「脱線」だらけなのでなかなかもとに戻れないんだけど、その脱線が楽しくて行っているところがある。最高の息抜きなんですよ。
み:冬も撮影に行かれてますよね。
清:冬はマイナス30~40度に気温が下がります。夏とは符号が逆で、気温差が60~80度もある。想像を超えてます。それだけに全く別の表情を見せてくれる。
草原に雪が積もるとほんとうに真っ白で、無の状態。
み:被写体はあるんですか?
清:そう、夏もそうなんだけど、被写体が無いんですよ(笑)。
前景を生かして・・・とかいっても、前景がない。空と大地だけ。
車が通るとわだちとか、動物の足跡とか。それぐらいでごく限られる。
何も無いところだからこそ、石ころ1つ現れても、撮影できることに感謝の気持ちが湧くんですよ。ひとつひとつに「撮らせてくれてありがとう」って。
■人物撮影の距離感
み:人物を撮影する際のコツってありますか?
清:写真って被写体との距離で決まると思ってます。その距離感を、望遠でごまかすことはしたくない。相手との距離感を楽しみたい。だから単焦点がいい。
GR DIGITAL II は、小さいからどんどん相手の懐に入って行き易いカメラ。カメラを感じさせない、すんなり入って行けるツールだと思います。
距離を詰めるのは自分との戦いで、ある種のずうずうしさも必要。安心できる距離を超えて、ギリギリの近距離でお互いが緊張しあっていると、写真にも緊張感が生まれます。
人を撮る時、僕は最初からいきなり懐に入っちゃう。すごく近づいて「なんだこいつは」と思わせといて、そこですっとひく、すると相手が安心する。相手を安心させられるところがいいんです。
じわじわ寄って行くのとは逆の撮り方をしています。
み:それは勇気がいりそうだけど、意外なテクニックですね。
■GR DIGITAL II に望むこと
み:最後に、GR DIGITAL II への要望はありますか?
清:写す機能的には十分なので、このスタイルで防塵防滴にして欲しいですね。
僕の使い方だと保証範囲を超えてると思うけど、やはり防塵ということには気を使います。
み:どうもありがとうございました!
■清水哲朗さんお気に入りの1枚!
皆既日食の只中、遊牧民の反応を知るべくゲルに訪れた。しかし、こちらの興味を裏切るように、いつもどおりの仕事をしている彼ら。驚かないのと僕が聞くと「最近はラジオで情報が入るからねぇ」だって。
■取材を終えて
心からモンゴルに惚れ込んで撮影していることが、言葉や表情からあふれ出て来るのを感じました。清水さんと一緒にモンゴルを旅したら、どんなに楽しいだろう。と思わずにいられません。(ぜひいつか!)
日本では想像もできない、非日常的な自然環境に臆するどころかそれを楽しんで、好きなものを撮影するためにまっすぐ向って行く。その行動力と思いの純粋さ、おおらかさを見習いたいと思いました。
清水哲朗(しみずてつろう)プロフィール
1975年横浜生まれ。日本写真芸術専門学校卒業後、写真家・竹内敏信事務所入社。23歳でフリーランスとして独立。モンゴルの大自然に魅了され、年に数回は現地を旅しながら撮影をしている。 『モンゴリアンチョップ』(NAA刊) 『もっと綺麗に撮るデジタル一眼レフ写真術』(MCプレス刊) 『デジタル一眼レフの基本テクニック』(新星出版社) 写真展開催、多数。 放浪フォトエッセイ『モンゴリアンチョップ』 http://rakuda.mda.jp/mongol/ (社)日本写真家協会会員 |
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